夫婦で一緒に遺言書を作れる?仲良し夫婦こそ知っておきたい「共同遺言」の禁止と安心の備え方

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はじめに:大切なパートナーと歩む「これからの安心」のために

「私たちが死んだあとは、お互いの財産を相手に譲って、最後は子供たちに……」

そんなふうに、ご夫婦で将来のことを話し合われるのは、とても素敵なことですね。

長年連れ添ったパートナーだからこそ、お二人の想いを一つの書類にまとめて残しておきたい、と考えるのは自然な流れかもしれません。

しかし、いざ遺言書を作ろうとしたとき、意外な法律の壁にぶつかることがあります。

それは「夫婦であっても、一つの遺言書に連名で書くことはできない」という決まりです。

「えっ、二人で納得して書くのにダメなの?」 「仲がいいからこそ、一緒に作りたいのに……」

そう不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。でも、ご安心ください。

法律で決まっている「形」さえ守れば、ご夫婦の想いを確実に形にすることは可能です。

この記事では、なぜ夫婦連名の遺言が認められないのか、そして、お二人の願いを叶えるためにはどのような方法がベストなのかを、司法書士の視点からお伝えしていきます。

夫婦で1通の遺言書はNG?法律で決まっている「共同遺言」の禁止とは

結論から申し上げますと、日本の法律(民法)では、「二人以上の人が、同じ紙(証書)に遺言を書くこと」を禁止しています。

これを「共同遺言の禁止」と呼びます。

たとえ、どれほど仲の良いご夫婦であっても、一つの書面に「私たち夫婦は……」と連名で署名・押印した遺言書は、残念ながら法律上の効力が認められず、無効になってしまいます。

なぜ「二人一緒」はダメなのでしょうか?

「自由なんだから、二人で書いてもいいじゃない」と思われるかもしれません。

しかし、このルールには、遺言書を書く人を守るための深い理由があります。

  1. 自由な意思を尊重するため 遺言は、亡くなるその瞬間まで、本人の意思でいつでも書き直すことができるものです。もし二人で1通の遺言書を作ってしまうと、後から一人が「やっぱり内容を変えたい」と思ったときに、もう一人の同意が必要になったり、相手に気を遣ってしまったりして、自由に変えられなくなる恐れがあります。

  2. 責任の所在をはっきりさせるため 一つの文章に二人の意思が混ざってしまうと、「どこまでが夫の意思で、どこまでが妻の意思なのか」が曖昧になり、後々、遺された家族が混乱する原因になってしまいます。

遺言書は、「法的な効力を持つ重要書類」です。そのため、お一人おひとりの意思を独立して守るために、このルールが定められているのです。

夫婦で「同じ想い」を叶えるための正しい作り方

「じゃあ、夫婦で内容を合わせることはできないの?」とがっかりしないでください。形式さえ分ければ、お二人の想いを一つにする方法はあります。

それは、「夫の遺言書」と「妻の遺言書」を、それぞれ別々に作成するという方法です。

「ペア遺言」で足並みを揃える

実務では、ご夫婦が同じ日に、同じ内容(お互いを思いやる内容)で、それぞれ一通ずつ遺言書を作成することがよくあります。

例えば、このような形です。

  • 夫の遺言書:「私の全財産を、妻に相続させる」

  • 妻の遺言書:「私の全財産を、夫に相続させる」

このように別々の書類にすれば、法律上の問題は全くありません。お二人の願いはしっかりと叶えられます。

仲良し夫婦にこそ選ばれている「公正証書遺言」のメリット

遺言書には、自分で手書きする「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」の主に2種類があります。

特にご夫婦で作成される場合は、「公正証書遺言」を強くおすすめしています。なぜ、多くのご夫婦がこちらを選ばれるのでしょうか。

1. 形式不備で無効になるリスクがゼロ

自分たちだけで書くと、日付の書き忘れや押印のミスなど、思わぬところで「無効」になってしまうリスクがあります。

公正証書遺言は、法律のプロである公証人が作成するため、形式的なミスで無効になることはありません。せっかくお二人で話し合った想いが無駄になるのを防げます。

2. 公証役場で「夫婦同時作成」ができる

多くの公証役場では、ご夫婦が同じ日に、並んで手続きをすることを快く受け入れてくれます。

3. 家庭裁判所での「検認」が不要

自筆の遺言書の場合、亡くなった後に家族が家庭裁判所へ持っていき、中身を確認する「検認」という手続きが必要になります。

これには数ヶ月かかることもあり、その間、預金が下ろせないなど残された配偶者が困る場面も少なくありません。

公正証書遺言なら、この検認が不要です。亡くなった後、すぐに手続きに移れるため、愛するパートナーに負担をかけずに済みます。

司法書士の視点:夫婦の遺言は「今の安心」と「先の安心」の二段構えで

どちらかが先に逝く、その時の不安を消すために

夫婦どちらかが亡くなったとき、残された側は深い悲しみの中にいます。そんな中、銀行の手続きや不動産の名義変更、親族への説明など、慣れない事務作業が山のように押し寄せます。 もし遺言書がなければ、他の相続人(お子様や、お子様がいない場合は亡くなった方の兄弟姉妹など)全員と話し合いをしなければなりません。

「長年住んだこの家は、引き続き私が住んでいいのかしら……」

「あの人の貯金を使えないと、生活が立ち行かなくなる……」

そんな不安をパートナーに抱かせないために、「全財産を妻に(夫に)」という遺言書は、最高のお守りになります。

二人が亡くなった後の「出口」まで話し合う

もう一つ大切なのは、お二人が共に亡くなった後(二次相続といいます)のことです。

  • 「最後は、私たちの面倒をよく見てくれた長女にこの家を継いでほしい」

  • 「子供がいないから、お世話になったあの団体に寄付したい」

こうした「最終的な出口」についても、元気なうちに二人で相談して、それぞれの遺言書に反映させておくことが大切です。

夫婦で遺言を作るステップ:何から始めればいい?

「よし、二人で作ってみよう」と思われたら、まずは以下のステップで進めてみるのがスムーズです。

ステップ1:財産の「見える化」

まずは、お二人の財産を書き出してみましょう。

  • 自宅不動産の名義はどちらになっているか?

  • 預貯金口座はどこに、いくらくらいあるか?

  • 有価証券や保険はどうなっているか?

このとき、負債(ローンなど)もしっかり把握しておくことが大切です。

ステップ2:希望のすり合わせ

「お互いに全部譲る」でいいのか、それとも「一部は孫に残したい」などの希望があるか。

ここでのポイントは、「法的にできるかどうか」は後回しにして、まずは「どうしたいか」という想いを優先することです。

ステップ3:専門家に相談する

大まかな方向性が決まったら、司法書士などの専門家に相談しましょう。

法律のルールに則った、間違いのない文案を作成します。特に「共同遺言の禁止」に触れないよう、それぞれの意思を独立させつつ、お二人の想いが矛盾しないよう調整いたします。

ステップ4:公証役場で作成

案文が完成したら、公証役場へ。 当日は、お二人それぞれに証人(利害関係のない人)が2名必要になりますが、司法書士が証人を務めることも可能です。

よくある不安:もし後で気持ちが変わったら?

「一度書いたら、絶対にその通りにしないといけないの?」 というご質問をよくいただきます。

答えは、「いいえ、いつでも、何度でも書き直せます」です。

人の気持ちや家族の状況は変わるものです。

  • 新しいお孫さんが生まれた

  • 自宅を売却して老人ホームに入ることにした

  • 以前よりも、特定の誰かに感謝の気持ちが強くなった

そんなときは、新しい日付で遺言書を作り直せば、古いものは自動的に無効(新しいものが優先)になります。

「今」のベストを形にしておく。そして変化があればその都度見直す。 遺言書とは、そうやってご自身の人生に寄り添わせていくものなのです。

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