「亡くなった親の土地を相続して、登記簿(登記事項証明書)を確認してみたら、見たこともない『買戻特約(かいもどしとくやく)』という文字が書かれていた……」
このような状況に直面して、不安を感じていませんか?
「買戻特約」は、すでに期間が過ぎていて、実質的には効力を失っているケースもあります。
そして、相続人であるあなた自身が手続きをして、その文字をきれいに消す(抹消登記をする)ことができます。
そもそも「買戻特約」ってなに?なぜついているの?
買戻特約を一言でいうと「買い戻せる権利」の約束
買戻特約を一言で表現すると、「売り主が、一度売った不動産を、後からお金を払って買い戻すことができる」という特別な約束(特約)のことです。
例えば、あなたが誰かに大切な家を売ったとします。
そのときに、「今は事情があって手放すけれど、10年以内なら、売ったときと同じ金額で買い戻してもいいですよ」という約束を事前に交わし、それを法務局に記録(登記)しておくことができるのです。この約束が「買戻特約」です。
買戻特約がついたままだと、どんなデメリットがある?
「効力が切れているなら、そのまま放っておいても大丈夫なのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、買戻特約の文字が登記簿に残ったままだと、これから先、いくつかの大きな困りごとが発生してしまいます。
主なデメリットは次の3つです。
デメリット①:その不動産を売却することができない
もしあなたが、相続した家や土地を「誰も住まないから売りたい」と考えたとき、買戻特約がついたままだと、買い手(購入希望者)が見つかりません。
なぜなら、購入を検討している人から見れば、「もし今この不動産を買っても、昔の売り主(公的機関など)から『返して』と言われたら、自分のものにならなくなってしまうかもしれない」という恐怖があるからです。
不動産の売買仲介をする業者からも、「まずは買戻特約を消してからでないと、売りに出せません」と必ず言われてしまいます。
デメリット②:銀行からお金を借りられない(住宅ローンやリフォームローン)
「家が古くなったからリフォームしたい」「新しく建て替えたい」と思ったとき、銀行などの金融機関でローンを組むのが一般的です。
銀行は、お金を貸す代わりに、その不動産に「抵当権(ていとうけん)」という、万が一のときに不動産を担保にできる権利を設定します。しかし、登記簿に買戻特約が残っていると、銀行は「買戻特約のほうが抵当権よりも優先されるため、怖くてお金を貸せない」と判断します。つまり、ローンの審査に通らなくなってしまうのです。
デメリット③:次の世代(子どもや孫)に負担を先送りしてしまう
「自分は売るつもりもないし、ローンを組む予定もないから関係ない」と思われるかもしれません。しかし、あなたが手続きをせずに放置すると、その不動産を将来さらに相続するあなたのお子様や、お孫様が同じ問題で頭を悩ませることになります。
時間が経てば経つほど、昔の契約書類を紛失してしまったり、関係する機関の組織が変わって手続きが複雑になったりします。
私の買戻特約はもう消せる?「期間」の見分け方
チェックするポイントは、ただ一つ。「期間が過ぎているかどうか」です。
買戻しの期間は「最長で10年」と法律で決まっている
日本の民法という法律では、買戻特約についてルールが定められています。
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買戻しができる期間は、契約から「最長で10年」まで。
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もし契約で10年より長い期間(例えば15年など)を定めていても、自動的に10年に短縮される。
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一度決めた期間は、後から原則延長することができない。
登記簿(登記事項証明書)のどこを見ればいい?
手元に土地や建物の「登記事項証明書(登記簿副本)」を用意して、以下の部分を探してみてください。
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「権利部(乙区)」ではなく「権利部(甲区)」を見ます。
(※甲区は所有権に関する歴史が書かれている場所です)
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あなたの親御様が購入した際の「所有権移転」の登記の下に、付記登記(小さな番号)で「買戻特約」と書かれた枠があります。
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その枠の中に、「買戻しの期間 〇年」または「契約の日付(昭和〇年〇月〇日など)」が記載されています。
例えば、契約の日付が「平成2年(1990年)5月1日」で、期間が「5年」と書かれていれば、平成7年(1995年)5月1日を過ぎた時点で、その買戻特約は中身が空っぽ(無効)になっています。
現在(2026年)から見れば、昭和や平成初期に結ばれた買戻特約は、100%の確率で期間が満了しています。
したがって、あなたの不動産にある買戻特約は、いつでも消せる状態にあります。
買戻特約を消すための「2つのルート」
この抹消手続きには、大きく分けて次の2つのルートがあります。
| ルートの名前 | 手続きの概要 | メリット | デメリット |
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① 単独抹消ルート
(契約から20年以上経過) |
相続人が1人だけで法務局に行って消すことができる。 | 相手方(公的機関など)と連絡を取る必要がなく、自分のペースでできる。 | 契約から20年未満の場合は使えない。 |
| ② 共同申請ルート | 昔の売り主(公的機関や自治体など)から書類をもらい、協力して消す。 | 契約から20年が経っていなくても使える。確実な書類が揃う。 | 相手方の窓口に連絡し、書類を郵送してもらう手間の時間がかかる。 |
買戻特約の抹消手続きにかかる「費用」の目安
手続きをするにあたって、一体いくらくらいのお金がかかるのかは、とても気になるポイントですよね。
あらかじめ費用の全体像を知っておけば、安心して準備を進めることができます。
ご自身で手続きを行う場合、かかる費用は大きく分けて「国に払う税金」と「書類の準備費用」の2つだけです。
7-1. 国に納める税金(登録免許税)
不動産の登記を消すときには、「登録免許税(とうろくめんきょぜい)」という税金がかかります。
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金額:不動産1個につき 1,000円
ここでいう「不動産1個」とは、土地1筆(ぴつ)、建物1棟という意味です。
例えば、「自宅の土地1つ」と「その上にある建物1つ」のセットであれば、合計で2個となり、税金は 2,000円 になります。
(※稀に、自宅の敷地が2つの小さな土地に分かれているケースがあります。その場合は、土地2個+建物1個=3個で3,000円となります。)
この税金は、現金ではなく、金額分の「収入印紙」を購入して、申請書に貼り付けて納めます。収入印紙は法務局の中にある売り場や、大きめの郵便局で購入できます。
7-2. 書類の集めにかかる実費(数百円〜数千円)
手続きのために役所などから取り寄せる書類の実費です。
自分だけで手続きをするのであれば、全体にかかる費用は数千円程度(2,000円〜5,000円ほど)で収まることがほとんどです。
3つの注意点
3つの注意点チェックリスト
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注意点①:そもそも「相続登記(名義変更)」は終わっていますか?
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注意点②:昔の売り主(公的機関)が「名前を変えている」ことはありませんか?
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注意点③:土地と建物、両方の登記簿を確認しましたか?
それぞれの注意点について、解説します。
注意点①:大前提として「相続登記」を先に完了させる必要がある
最初の方でも少し触れましたが、買戻特約を消すための申請書を提出できるのは、現在のその不動産の正しい持ち主(所有者)だけです。
もし、登記簿上の名前がまだ「亡くなったお父様」のままになっている場合、法務局はあなたからの「買戻特約を消してください」というおねがいを受け付けることができません。
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ステップ1:まずは土地・建物の名義を、亡くなった親からあなたの名義に変える(相続登記)
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ステップ2:あなたの名義になった後、買戻特約を消す(抹消登記)
という順番を守る必要があります。
(※なお、この2つの手続きは、2枚の申請書を同時に法務局の窓口へ提出して、いっぺんに進めることも可能です。)
2024年4月から、家や土地を相続した際の名義変更(相続登記)は法律で義務化されました。「まだ名義を変えていなかった!」という方は、まずは相続登記の準備からスタートしましょう。
注意点②:昔の売り主の「名前」や「住所」が変わっている場合
共同申請ルート(昔の売り主から書類をもらう方法)を使うときに、よくあるトラブルです。
例えば、登記簿には「住宅都市整備公団」と書かれているのに、送られてきた書類には「独立行政法人都市再生機構」と書かれているようなケースです。
人間でいうところの「結婚して苗字が変わった」状態ですね。
このように名前が変わっている場合、法務局に対して「昔の公団と、今の機構は、名前が変わっただけで同じ組織ですよ」ということを証明する書類(履歴事項証明書など)を一緒に提出しなければなりません。
基本的には、書類をくれる公的機関が「これと一緒に法務局に出してくださいね」と証明書をセットで添付してくれることが多いですが、自分でバラバラに集めようとすると、頭がこんがらがってしまう原因になります。
注意点③:土地だけではなく「建物」にもついている場合がある
「買戻特約は土地だけにつくもの」と思い込んでいると、思わぬ見落としをすることがあります。
基本的には土地につくことが多いのですが、稀に建売住宅(土地と建物がセットで分譲されたもの)の場合、建物側の登記簿にもまったく同じ買戻特約がくっついていることがあります。
もし土地だけしか手続きをしなかった場合、建物の買戻特約が残ってしまい、後から売却するときに「建物のほうも消してください」と二度手間になってしまいます。念のため、手続きを始める前に、土地と建物の「両方」の登記事項証明書を確認しておきましょう。





