相続した不動産を売りたい・譲りたいときのガイド|手続きの流れと注意点を専門家が解説

相続した不動産、どうすればいい?売却と贈与の基本を解説

「親から受け継いだ実家、誰も住む予定がないけれどどうすればいいの?」

「将来のために、今のうちに子供に家を譲っておきたいけれど、何から始めればいい?」

大切なご家族から受け継いだ不動産。

それは単なる「資産」ではなく、これまでの家族の思い出が詰まった大切な場所ですよね。

しかし、いざその不動産を「売却」したり「贈与」したりしようと思うと、聞き慣れない法律用語や複雑な手続きが目の前に立ちはだかります。

「難しいことはわからない」「損をしたくない」「誰を信じて相談すればいいのか不安……」

この記事では、司法書士の視点から、相続した不動産を売却・贈与する際に必要な知識をお伝えします。

相続した不動産を売ったり譲ったりするには、必ず「相続登記(名義変更)」というステップを避けて通ることはできません。

この「名義を整える」という土台があって初めて、次のステップへ進むことができるのです。

そもそも「売却」と「贈与」は何が違うの?

不動産を手放す、あるいは誰かに渡す方法として代表的なのが「売却」と「贈与」です。

まずはこの2つの違いを、整理しておきましょう。

「売却」はお金を受け取って所有権を移すこと

売却とは、第三者(または親族)に対して、不動産を買い取ってもらうことです。

  • メリット: まとまった現金が手に入る。管理の手間や固定資産税の負担から解放される。

  • ポイント: 市場価格で取引されるため、適正な価格で売るための準備が必要です。

「贈与」は無償で(タダで)所有権を渡すこと

贈与とは、見返りを求めずに自分の意思で誰かに不動産をプレゼントすることです。

  • メリット: 自分の意思で、特定の相手(子や孫など)に確実に引き継ぐことができる。

  • ポイント: 「あげる側」と「もらう側」の合意が必要です。

どちらの方法を選ぶにせよ、共通しているのは「誰がその不動産の本当の持ち主なのか」を証明する手続きが不可欠だということです。

売却や贈与の前に絶対必要な「相続登記」とは?

不動産の手続きにおいて、最も重要なのが「相続登記」です。

これは、亡くなった方の名義になっている不動産を、現在の相続人の名義に書き換える作業のことです。

なぜ相続登記をしないと売れないのか?

 法的には、亡くなった方の名義のままでは、売買契約を結ぶことも、贈与の手続きを進めることもできません。

  • 売却の場合: 買い主は「登記簿上の所有者」から買いたいと考えます。

  • 贈与の場合: あげる人の名義になっていなければ、プレゼントする権利がありません。

2024年4月から「相続登記」が義務化されました

これまでは、相続登記をいつまでにしなければならないという期限はありませんでした。

しかし、所有者不明の土地が増えすぎた社会問題を背景に、法律が改正され、相続登記が義務化されました。

「いつかやればいい」と放置していると、過料(罰金のようなもの)の対象になる可能性もありますので、早めの対応が安心です。

相続した不動産を「売却」するまでの流れ

では、実際に相続した不動産を売却する際の手順を、ステップ形式で見ていきましょう。

① 遺産分割協議で「誰が売るか」を決める

まず、亡くなった方の遺産をどう分けるかを話し合います。 不動産を売る場合、以下のどちらかの方法をとることが一般的です。

  1. 代表者が相続して売る: 相続人の一人が一旦その不動産を相続し、その人が売り主となって売却する。

  2. 換価分割: 相続人全員で「売って得たお金を分ける」と決め、売却代金を分配する。

② 必要書類を集めて「相続登記」を行う

売却の準備として、法務局で名義変更の手続きを行います。

  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本

  • 相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書

  • 遺産分割協議書

③ 不動産会社に査定・売却活動を依頼する

名義変更の目処が立ったら、不動産会社に相談します。

「いくらで売れそうか」を査定してもらい、媒介契約を結んで買い手を探します。

④ 売買契約の締結と「所有権移転登記」

買い手が見つかったら、売買契約を結びます。

代金の支払いと引き換えに、名義を「相続人」から「買い主」へと移す登記を行います。これが完了して、初めて売却手続きが終了します。

相続した不動産を「贈与」するまでの流れ

次に、お子さんやお孫さんに不動産を譲りたい(贈与したい)場合の流れを確認します。

① 「贈与契約」を結ぶ

贈与は、一方的な思いだけでは成立しません。「あげます」「もらいます」という双方の合意が必要です。

口約束でも成立はしますが、後々のトラブルを防ぎ、登記手続きを進めるためには、必ず「贈与契約書」を作成します。

② 必要書類を準備する

  • 贈与する人:権利証(登記済証または登記識別情報)、印鑑証明書、固定資産評価証明書

  • もらう人:住民票

③ 法務局で「贈与による所有権移転登記」を申請する

売却の時と同じように、法務局で名義変更の申請をします。

この手続きが完了することで、初めて第三者に対しても「この家は私のものです」と言えるようになります。

不動産の売却・贈与で注意すべきポイント

不動産の手続きは、一度完了してしまうとやり直しが非常に困難です。

以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。

共有名義での相続は慎重に

「兄弟仲良く半分ずつ」と、一つの不動産を複数人の名義(共有名義)にするのは、一見公平に見えます。

しかし、将来その不動産を売ろうと思ったとき、共有者全員の同意が必要になります。

「兄は売りたいけど、弟は残したい」と意見が割れると、身動きが取れなくなってしまいます。

将来的な売却を考えているなら、なるべく名義は一人に集約させるのが賢明です。

境界トラブルがないか確認する

特に古い実家などの場合、隣の家との境界線が曖昧なことがあります。

売却の際、買い主から「どこからどこまでが土地の範囲ですか?」と問われます。

境界がはっきりしていないと、売却価格が下がったり、契約が白紙になったりすることもあります。

登記にかかる「登録免許税」

名義変更をする際には、国に「登録免許税」という税金を納める必要があります。

これは売買代金や評価額によって異なりますが、あらかじめコストとして計算に入れておくべき項目です。

不動産の「生前対策」として贈与を考える方へ

「自分が元気なうちに、子供に名義を変えておきたい」というご相談も増えています。

これは非常に素晴らしい考えですが、いくつか検討すべき点があります。

贈与した後に「やっぱり返して」は通用しない

一度贈与の手続きをして登記を移すと、原則として元に戻すことはできません。

ご自身の老後の住まいや資金計画に無理がないか、慎重に判断することが大切です。

「遺言」という選択肢も視野に

今すぐ名義を変える(贈与する)のではなく、「自分が亡くなった後は、この子にこの家を譲る」という内容の「遺言書」を書いておく方法もあります。

これなら、生前は自分の名義のまま安心して住み続けることができ、かつ将来の承継先も指定できます。

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