相続手続き中に、もし相続人が亡くなってしまったら?「数次相続」の基本と進め方を解説

ご家族が亡くなり、悲しみの中で慣れない相続手続きを進めている最中、追い打ちをかけるように別の相続人の方が亡くなってしまう……。

このような状況に直面し、「これからどうすればいいの?」「手続きは最初からやり直し?」と不安で胸がいっぱいになっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

相続が重なることは、実は珍しいことではありません。

このように、最初の相続(一次相続)が終わる前に、相続人が亡くなって次の相続(二次相続)が発生することを、法律用語で「数次相続(すうじそうぞく)」と呼びます。

文字だけ見ると難しく感じるかもしれませんが、安心してください。

この記事では、数次相続が起きた時の手続きの流れや、よく混同される「代襲相続」との違い、そしてトラブルを防ぐためのポイントをお伝えします。

相続手続き中に相続人が亡くなる「数次相続」とは?

なぜ「数次相続」という言葉を知っておく必要があるの?

「数次相続」とは、簡単に言うと「相続がドミノ倒しのように重なってしまった状態」を指します。

例えば、お父様が亡くなり、お母様とお子様で遺産分割の話し合いをしていたとします。その話し合いがまとまる前に、お母様も亡くなってしまった場合、お父様の相続(1番目)とお母様の相続(2番目)が同時進行で関わってくることになります。

この状態を放置してしまうと、誰が権利を持っているのかが複雑になり、不動産の名義変更や銀行口座の解約ができなくなってしまう恐れがあります。

「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」との決定的な違いは?

よく似た言葉に「代襲相続」があります。どちらも「本来の相続人の代わりに、その子供などが相続する」という点は似ていますが、「亡くなったタイミング」が全く違います。

  • 代襲相続: 親より先に、子供が亡くなっている場合。

  • 数次相続: 親が亡くなった後、手続きが終わる前に子供が亡くなった場合。

この違いによって、誰が話し合い(遺産分割協議)に参加すべきかが変わってくるため、まずは「どちらのケースに当てはまるのか」を正しく把握することが第一歩です。

 数次相続が発生した時、誰が「相続人」になるの?

相続人が亡くなると、その人の権利や義務はさらにその人の相続人に引き継がれます。

ここが混乱しやすいポイントですので、具体例で整理してみましょう。

具体的なケーススタディ

【家族構成】

  • 父(被相続人):1月に逝去

  • 母(相続人A):3月に逝去

  • 長男(相続人B)

  • 長女(相続人C)

この場合、1月に亡くなったお父様の遺産を誰が分けるべきでしょうか?

本来なら「母・長男・長女」の3人で話し合うはずでした。しかし、お母様が亡くなったため、お母様が持っていた「お父様の遺産を受け取る権利」は、お母様の相続人である「長男・長女」に引き継がれます。

結果として、長男と長女の2人で「お父様の遺産」と「お母様の遺産」の両方について話し合うことになります。

もし亡くなった相続人に後妻や後夫がいたら?

ここで注意が必要なのが、亡くなった相続人に配偶者(妻や夫)がいる場合です。

先ほどの例で、もし「長男」が相続手続き中に亡くなり、長男に「妻」がいた場合、お父様の遺産分割協議には「長男の妻」が参加することになります。

血縁関係のない親族が話し合いに加わることになるため、意見がまとまりにくくなるケースもあります。これが数次相続の難しさであり、早めの対応が求められる理由です。

数次相続の手続きはどう進める?3つの重要ステップ

「手続きが2倍になって大変そう……」と感じるかもしれませんが、基本的には一つずつ紐解いていけば大丈夫です。

主なステップを確認しましょう。

ステップ①:家系図を作成して「誰が参加者か」を確定させる

まずは、亡くなった方全員の戸籍謄本を集め、現在の相続人が誰であるかを正確に把握します。数次相続では、通常の相続よりも多くの戸籍謄本が必要になります。

ステップ②:遺産分割協議(話し合い)を行う

数次相続の場合、1枚の書面に「父の遺産についても、母の遺産についても、まとめて合意します」とまとめることができる場合があります。

これを「遺産分割協議書」に記していきます。

ステップ③:不動産や銀行の名義変更

話し合いがまとまったら、法務局での登記手続きや、金融機関での解約手続きを行います。

知っておきたい「数次相続」のメリット・デメリット

あまりメリットという言葉は適切ではないかもしれませんが、法律上、数次相続になったことでスムーズに進むケースと、逆に困難になるケースがあります。

メリット:中間の相続登記を省略できることがある

本来、不動産の名義を「父→母→子」と移すには、2回分の登記申請と登録免許税が必要です。しかし、一定の条件(中間相続人が1人だけで、最終的な相続人が1人である場合など)を満たせば、「父→子」へ直接名義を変えることができます。

デメリット:とにかく書類集めと確認が大変

通常の相続でも戸籍集めは重労働ですが、数次相続では亡くなった方の数だけ遡る必要があります。

また、相続人の数が増えやすく、面識のない親族と連絡を取り合わなければならない精神的な負担も増える傾向にあります。

相続放棄を考えている方への注意点

もし、亡くなった相続人が借金を抱えていた場合や、最初の方の相続に関わりたくない場合、「相続放棄」という選択肢があります。

しかし、数次相続での放棄は非常に複雑です。

  • 「父の相続」だけ放棄して、「母の相続」は承認する

  • 「母の相続」を放棄すると、自動的に「父の相続権」も失う

このように、どちらを先に放棄するかで結果が大きく変わります。

熟慮期間(3ヶ月以内)のカウントも、自分が相続人になったことを知った時から始まりますが、数次相続の場合は「自分の親が亡くなったことを知った時」が基準になるため、期限に注意が必要です。

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