最近よく聞く『家族信託』って、結局のところ何がいいの?
「認知症になったら銀行口座が凍結されるって本当?」
「うちの家族にぴったりの方法なのか知りたい」
そんな不安や疑問を抱えていませんか?
特に、大切な親御さんの老後や、ご自身の財産の守り方について考えるとき、「家族信託」という言葉は、希望の光に見えることもあれば、少し難しくてハードルが高く感じられることもあるかもしれません。
先に結論をお伝えすると、家族信託は「認知症による財産の凍結を防ぎ、家族の想いを形にするための非常に強力なバトン」です。
家族信託とは?「家族による、家族のための財産管理」
まず、家族信託をひとことで表現するなら、「大切な財産の管理を、信頼できる家族に託す仕組み」です。
これまでは、認知症などで判断能力が低下してしまうと、銀行口座が凍結されたり、自宅の売却ができなくなったりといったトラブルが絶えませんでした。
これを解決するために「成年後見制度」という仕組みもありますが、実は使い勝手が悪いと感じる方も少なくありません。
そこで登場したのが家族信託です。
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委託者(いたくしゃ): 財産を預ける人(例:高齢の親)
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受託者(じゅたくしゃ): 財産を預かって管理する人(例:子ども)
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受益者(じゅえきしゃ): 財産から出る利益を受け取る人(例:高齢の親)
このように、「所有者」としての権利を「管理する権利」と「利益をもらう権利」に分け、管理のバトンを子ども世代に渡しておくことで、万が一の時にもスムーズに生活を守れるようにする。それが家族信託の本質です。
家族信託を活用する最大のメリット
家族信託がなぜこれほど注目されているのでしょうか。それには、他の制度にはない「5つの大きな安心」があるからです。
認知症になっても「口座凍結」や「資産凍結」を防げる
最も大きなメリットは、なんといっても「認知症対策」としての絶大な効果です。
通常、本人の判断能力が不十分だと判断されると、銀行は口座を凍結します。
これは本人を守るためですが、介護費用や入院費を本人の貯金から出せなくなるという、家族にとっては死活問題につながります。
家族信託を契約しておけば、たとえ親御さんが認知症になった後でも、受託者であるお子さんの判断で、信託専用の口座から生活費を引き出すことができます。
自宅の売却や不動産管理がスムーズにできる
「介護施設に入るための費用を捻出するために、誰も住まなくなった実家を売りたい」
そんな時、所有者である親御さんの判断能力が失われていると、勝手に売却することは法律上できません。
家族信託で「不動産の管理・処分」の権限をお子さんに預けておけば、お子さんの印鑑と署名で実家を売却し、その代金を施設入居費に充てることが可能になります。「空き家問題」を未然に防ぐ、非常に有効な手段といえます。
「成年後見制度」の不便さを解消できる
これまで認知症対策の主流だった「成年後見制度」には、いくつか使いにくい点がありました。
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一度始めると亡くなるまでやめられない。
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裁判所が選んだ専門家(弁護士や司法書士)が後見人になると、月数万円の報酬がずっと発生する。
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財産を「守る」ことが目的なので、柔軟な資産運用や積極的な活用ができない。
家族信託は、信頼できる家族に管理を任せるため、「月額報酬が発生しない(家族間の場合)」「柔軟な財産管理ができる」という大きな利点があります。
二代先、三代先まで「財産の行く末」を決められる(跡継ぎ遺贈)
これは遺言書でもできない、家族信託だけの特別な機能です。
遺言書では「自分の財産を妻に渡す」とは書けますが、「妻が亡くなった後は、長男ではなく、家を継ぐ次男に渡してほしい」といった、次の次の代のことまで指定することはできません。
家族信託なら、「まずは妻に。妻が亡くなった後は次男に。」というように、世代を超えた財産のバトンタッチを細かく設計できるのです。
知っておくべき家族信託のデメリットと注意点
良いことばかりに見える家族信託ですが、検討する際には必ず知っておかなければならないデメリットがあります。
受託者(管理する人)に一定の負担がかかる
管理を任されたお子さんは、自分の通帳とは別に「信託専用の通帳」を作り、親御さんのために使ったお金の記録(帳簿)をつける義務があります。
「家族なんだから適当でいいよね」とはいかず、年に一度は管理状況を報告する義務も生じます。この事務的な手間を、お子さんが納得して引き受けてくれるかどうかが重要なポイントです。
家族間でのトラブル(争族)の火種になる可能性
信託は、一部の家族(例えば同居している長男)に強い権限を与えることになります。
他の兄弟がこの仕組みをよく理解していないと、「長男がお父さんの財産を独り占めしようとしている!」と誤解され、親族間の亀裂が生じることがあります。
契約の前に、必ず家族全員で話し合い、情報を共有しておくことが「円満な信託」の条件です。
信託できない財産がある
家族信託は万能ですが、すべての財産を入れられるわけではありません。
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年金受給権: 年金は「本人の口座」に振り込まれることが法律で決まっており、信託口座に直接振り込ませることはできません。
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農地: 農地を信託するには、農業委員会の許可など非常に高いハードルがあります。
これらは、信託の外で管理する方法を併せて考える必要があります。
初期費用(コンサルティング費用)が必要
家族信託は、オーダーメイドで契約書を作成します。
公証役場への手数料や、不動産の登記費用、そして何より「将来トラブルにならないための設計図」を描く専門家への報酬が必要です。
遺言書作成に比べると初期費用は高めになる傾向がありますが、その後の安心感(成年後見人の報酬が不要になる等)と比較して判断することをおすすめします。
家族信託と「遺言」「成年後見」はどう違う?
よく比較される3つの制度の違いを、分かりやすく表にまとめました。
| 項目 | 家族信託 | 遺言書 | 成年後見制度 |
| 主な目的 | 認知症対策 + 資産承継 | 亡くなった後の争い防止 | 認知症後の本人の保護 |
| 効力が出る時 | 契約後すぐ(認知症前から) | 亡くなった時 | 認知症が進んだ後 |
| 財産管理 | 家族が柔軟に行える | できない | 裁判所の監督下で厳格に |
| 費用 | 初期費用は高い | 比較的安い | 継続的な報酬がかかる |
| 二代先の設定 | 可能 | 不可能 | 不可能 |
家族信託は、いわば「遺言書」と「成年後見」の良いとこ取りをしたハイブリッドな制度といえます。
家族信託が向いているのは、こんなご家庭です
これまでお伝えした特徴を踏まえ、特に家族信託をおすすめしたいのは以下のようなケースです。
親御さんの主な財産が「自宅不動産」である
預貯金が少なく、資産の大部分が自宅という場合、親御さんが入院した際に「自宅を売って費用を作りたい」というニーズが強くなります。
家族信託をしておかないと、いざという時に売却できず、家族が費用を立て替える負担が重くのしかかります。
障がいを持つお子さんがいる(親なきあと問題)
自分が亡くなった後、障がいを持つお子さんの生活を誰が支えるのか。これは親御さんにとって最大の悩みです。
家族信託を使い、信頼できる親族や施設に管理を託し、そこから定期的にお子さんへ生活費を渡す仕組み(受益者連続信託)を作っておくことで、安心のバトンを繋ぐことができます。
再婚しており、前妻・前夫との間に子どもがいる
現在の配偶者に財産を残したいけれど、その配偶者が亡くなった後は「自分の血を引く子ども」に財産を戻したい。
このような複雑な希望は、遺言書では叶えられません。
家族信託であれば、配偶者の生活を守りつつ、最終的な帰属先を指定できるため、将来の争いを防げます。
事業を営んでおり、自社株の承継を考えている
経営者の方が認知症になると、株主総会で議決権が行使できず、会社の経営がストップしてしまいます。
家族信託で後継者にお子さんを指名しておけば、経営権(議決権)をスムーズに引き継ぎつつ、株による利益(配当など)は引き続き本人が受け取ることができます。
よくある誤解:「家族信託をすれば、すべて解決する?」
ここで、相談現場でよく受ける誤解についても触れておきます。
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「家族信託をすれば、遺言書はいらない?」
いいえ、併用するのが一般的です。信託しなかった財産(例えば、後から見つかったへそくりや、信託に入れなかった年金など)については、遺言書で誰に渡すか決めておく必要があります。
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「認知症がかなり進んでいてもできる?」
残念ながら、本人の判断能力がしっかりしているうちでないと、契約を結ぶことはできません。家族信託は「本人の意思」を尊重する制度だからです。
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「信託したら、自分のお金が自由に使えなくなる?」
そんなことはありません。あくまで「管理」を任せるだけで、その財産から出る利益(生活費やレジャー費)を受け取るのはご本人(委託者)です。これまで通りの生活を送りながら、管理のバックアップをつけるイメージです。





