家族信託と遺言の違いを解説。老後の安心と死後の円満を両立させる方法

はじめに:「生前」も「死後」も安心したい、あなたへ

「自分がもし認知症になったら、家族に迷惑をかけたくない」

「自分が亡くなった後、家族が財産の分け方で揉めないようにしたい」

将来のことを考えたとき、多くの方がこの二つの願いを持たれます。

こうした願いを叶えるための道具として、最近よく耳にするのが「遺言(ゆいごん)」と「家族信託(かぞくしんたく)」です。

どちらも「大切な財産をどうするか決めておくもの」という点では似ていますが、実はこの二つ、分野がまったく異なります。

「遺言を書いておけば、認知症になっても安心よね?」

「家族信託をしていれば、遺言書はいらないのかしら?」

そんなふうに迷われている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、司法書士の視点から、遺言と家族信託の違いを比較し、最適な組み合わせ方をお伝えします。

 遺言と家族信託、最大の違いは「いつから守ってくれるか」

まず、一番大切な違いをシンプルにお伝えします。それは、「その仕組みがいつ動き出すか」という点です。

遺言は「死後のバトンタッチ」

遺言は、あなたが亡くなった瞬間に初めて封が解かれ、効力が発生します。

  • 役割: 「亡くなった後の財産の分け方」を決める。

  • イメージ: あなたの人生の「最終的な結論」を家族に伝えるお手伝いです。

家族信託は「今からの伴走」

家族信託は、契約を結んだその日から(あるいは一定の条件から)、財産の管理が始まります。

  • 役割: 「生きている間から亡くなった後まで」の財産管理を任せる。

  • イメージ: あなたの人生の「これからの歩み」を、家族と一緒に支えるお手伝いです。

遺言に「できること」と「できないこと」

遺言書は、古くからある非常に強力な「想いの伝え方」ですが、万能ではありません。

遺言で「できること」

  • 相続トラブルを防ぐ: 「誰に何を渡すか」を明確にすることで、兄弟喧嘩を防げます。

  • 家族以外に財産を贈る: 孫やお世話になった人、保護団体など、法定相続人以外にも財産を託せます。

  • 遺言執行者を決める: 死後の手続きをリードしてくれる人を指定でき、家族の負担を減らせます。

遺言で「できないこと(弱点)」

  • 認知症対策にはならない: 遺言はあくまで「亡くなった後」の話。もし認知症になって銀行口座が凍結されても、遺言書があるからといってお金を下ろすことはできません。

  • 「次の次の代」までは指定できない: 「長男に継がせ、長男が亡くなったら孫に……」といった、何代にもわたる指定は原則としてできません。

 家族信託に「できること」と「できないこと」

家族信託で「できること」

  • 認知症による「資産凍結」を防ぐ: 判断能力が低下しても、預けた家族(受託者)があなたの代わりに、あなたの介護費用のために、預金を下ろしたり家を売ったりできます。

  • 柔軟な財産管理: 「自分が元気なうちは自分でやるけれど、判断力が落ちたら息子に任せる」といったカスタマイズが可能です。

  • 「次の次の代」の承継: 「妻が亡くなったら、その後は自分の甥に……」という、長期的な財産承継の指定が可能です。

家族信託で「できないこと(弱点)」

  • 「身の回り」の世話はできない: 財産の管理はできますが、施設の入所契約や入院手続きなどの「身上保護」の権限はありません(これには「任意後見制度」の併用が有効です)。

  • すべての財産をカバーするのは大変: 不動産や特定の預金などは信託できますが、身の回りのすべての生活備品などを信託するのは実務上困難です。

【比較表】遺言 vs 家族信託:どっちを選ぶ?

あなたの不安の種類に合わせて、どちらが適しているか確認してみましょう。

比較項目 遺言書(公正証書) 家族信託
効力の発生時 亡くなった時 契約した時(生存中から)
認知症対策 × できない 〇 得意
財産の分け方指定 〇 できる 〇 できる
二次相続の指定 × できない 〇 できる
管理の柔軟性 △ 死後に固定される 〇 生前から柔軟
身上保護の指定 × できない × できない
初期費用 比較的安い 比較的高い(設計が必要なため)

【司法書士の視点】二つの仕組みを「重ね着」する安心

ここで、私がご相談をお受けする際にいつも大切にしている考え方をお伝えします。

それは、「遺言と家族信託、どちらか一方で済ませようとしないこと」です。

なぜ「組み合わせ」が最強なのか

家族信託は、不動産や多額の預金など「特定の大きな財産」を確実に守るためのものです。

一方で遺言は、信託しきれなかった身の回りの預金や、大切にしていた趣味の品々、そして何より「家族への最後の感謝の言葉」をすべて包み込むものです。

  1. 家族信託で: 認知症による資産凍結を防ぎ、老後の介護資金を確保する。

  2. 遺言で: 信託財産以外のこまごまとした財産の行き先を決め、家族へのメッセージを遺す。

このように二つを組み合わせることで、あなたが生きている間の「安心」と、亡くなった後の「円満」が、守られることになります。

 あなたの家庭にはどのプラン?3つの典型例

Aさん:相続税の心配がなく、認知症が不安な方

  • おすすめ: 「家族信託」をメインに。

  • 理由:財産を分けることよりも、施設費用などをスムーズに捻出できる体制を優先。

Bさん:子供がおらず、奥様の今後が心配な方

  • おすすめ: 「家族信託」と「遺言」の併用。

  • 理由:奥様が認知症になった際の管理(信託)と、最終的に残った財産の行き先(遺言)を両方指定。

Cさん:家族仲が良く、複雑な財産がない方

  • おすすめ: まずは「遺言」から。

  • 理由:シンプルな相続トラブル防止を第一に。

相続・遺言に関するお問い合わせ

司法書士 後藤リーガルオフィスのホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。
初回相談は無料となります。お気軽にお問い合わせください。
ご相談はZoom等のオンラインでの相談も承っております。

お電話、LINE、または下記フォームに必要事項をご入力のうえ、送信してください。
なお、迷惑メール防止設定をされている場合は、当事務所からのメールが受信できるよう、ドメイン受信設定のご確認・変更をお願いいたします。

お電話でのお問い合わせ

「ホームページを見た」とお伝えください。

受付時間:平日9:00-18:00
LINEでのお問い合わせ
メールでのお問い合わせ

    ご希望の連絡先

    このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

    ページトップへ戻る