「亡くなった父の土地の上に、母の名義のままの家が建っている……」
「両親が二人とも他界してしまったけれど、名義がバラバラ。これってどうすればいいの?」
大切なご両親を相次いで亡くされた際、ふと登記簿を確認して驚かれる方は少なくありません。
土地と建物の名義が異なっている状態は、一見すると「家族のものだから大丈夫」と思われがちですが、実は放置しておくと、将来お子様や孫の代にまで大きな負担をかけてしまう「時限爆弾」のような問題を抱えているのです。
この記事では、司法書士の視点から、「亡父名義の土地」と「亡母名義の建物」が混在している場合の手続き方法について、丁寧に解説します。
なぜ「土地が父・建物が母」の名義のままではいけないのでしょうか?
まず、一番大切な結論からお伝えします。 土地と建物の名義が亡くなった方のままになっている場合、できるだけ早く「相続登記(名義変更)」を行う必要があります。
日本の法律では、土地と建物はそれぞれ「別々の不動産」として扱われます。
たとえ夫婦であっても、土地は父、建物は母というように別々に登記されていることは珍しくありません。
しかし、そのまま放置してしまうと、以下のような深刻なトラブルに直面する可能性が高まります。
売却やリフォーム、住宅ローンの借り換えができない
不動産の名義が亡くなった方のままだと、その家を売ることも、担保に入れてお金を借りることもできません。
また、大規模なリフォームを行う際に、銀行から融資を受けようとしても、名義が現在の所有者(相続人)になっていなければ審査に通りません。
相続人が増えて、話し合いがまとまらなくなる
名義変更をせずに10年、20年と放置している間に、相続人の一人(例えばあなたのご兄弟)が亡くなってしまうことがあります。
すると、その方の配偶者や子供たちが相続権を引き継ぐことになり、当初は3人だった相続人が、気づけば10人以上に膨れ上がってしまうケースも珍しくありません。
2024年4月からの「相続登記の義務化」
2024年4月より相続登記が法律で義務化されました。
正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料(罰金のようなもの)を科される可能性があります。
「面倒だから」と後回しにできる時代ではなくなったのです。
【ケース別】名義変更の手続きはどう進める?
土地が父、建物が母というケースでは、大きく分けて2つのステップで手続きを考えます。それぞれの遺言書の有無や、相続人の状況によってルートが異なります。
ステップ①:誰が引き継ぐのかを「遺産分割協議」で決める
遺言書がない場合、まずは相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を行い、「土地を誰が継ぐか」「建物を誰が継ぐか」を決めなければなりません。
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パターンA:一人の相続人が土地も建物も引き継ぐ 最もシンプルで、後のトラブルも少ない方法です。例えば長男が「土地も建物も私が相続する」と決めるケースです。
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パターンB:土地と建物を別々の人が引き継ぐ 例えば「土地は兄、建物は弟」という分け方も法律上は可能ですが、将来建物を壊すときや土地を売りたいときに揉める原因になるため、慎重な判断が必要です。
ステップ②:必要書類を揃えて法務局へ申請する
話し合いがまとまったら、「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員の署名と実印での押印を行います。これを持って法務局に登記申請を行います。
手続きに必要な書類リスト(チェックリストとしてお使いください)
「何を集めればいいかわからない」という不安を解消するために、一般的な必要書類を整理しました。
亡くなった父・母(被相続人)に関する書類
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出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍) ※「死亡したこと」がわかるものだけでなく、生まれてから亡くなるまでの全ての履歴が必要です。これが最も集めるのが大変な書類です。
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住民票の除票(または戸籍の附票) ※登記簿上の住所と、亡くなった時の住所が一致していることを証明するために必要です。
相続人全員に関する書類
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現在の戸籍謄本
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印鑑証明書
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住民票(新しく名義人になる方のみ)
不動産に関する書類
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名寄帳(又は固定資産税評価証明書 )※名義変更にかかる登録免許税(手数料)を計算するために必要です。
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登記簿謄本(履歴事項全部証明書) ※現在の権利関係を正確に把握するために必須です。
よくあるお悩み:「土地が父・建物が母」特有の落とし穴
このケースで特に注意が必要なポイントを3つ挙げます。
① どちらか一方だけ名義変更するのはNG
「とりあえず母の名義になっている建物だけ、私(子)の名義に変えよう」と考える方がいますが、これはおすすめしません。土地が亡き父の名義のままだと、将来その建物を壊して建て替えたい時や、売却したい時に、結局「父の土地の名義変更」が必要になるからです。
手間も費用もかかりますが、土地と建物をセットで、同時に整理する方がいいと考えます。
② 数次相続(すうじそうぞく)の複雑さ
お父様が亡くなった後、お母様が亡くなるまでの間に数年の開きがある場合、手続きは「二段構え」になります。
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父から母(または子)への相続
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母から子への相続 これをまとめて一つの申請でできる場合と、二回に分けなければならない場合があります。この判断は非常に専門的なため、法務局の窓口や専門家に確認することをお勧めします。
③ 借地権や未登記物件の確認
古いお家の場合、建物が「未登記(名義が登録されていない)」であったり、土地が実は「借地(他人の土地)」であったりすることもあります。
ご両親が亡くなると、当時の事情を知る人がいなくなってしまいます。
今のうちに、契約書や固定資産税の通知書をしっかりと確認しておくことが重要です。
難しい戸籍集めをスムーズに進めるコツ
「亡くなった父の出生からの戸籍を集めてください」と言われて、スムーズに集められる方はほとんどいません。
なぜなら、昔の戸籍は手書きで読みにくく、また、結婚や転籍(本籍地の変更)を繰り返していると、日本全国の役所に郵送で請求しなければならないからです。
コツは、「一番新しい戸籍」から順に、過去へ遡っていくことです。
現在の戸籍には、一つ前の本籍地が記載されています。そこを辿って、またその前の役所へ……という作業を繰り返します。
もし相続人の中に「認知症の方」や「行方不明の方」がいる場合
「母の名義の建物を変えたいけれど、相続人の一人である叔父が認知症で話し合いができない……」 「長年連絡が取れない兄がいるけれど、どうすればいいの?」
このような特殊なケースでも、諦める必要はありません。
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認知症の方がいる場合:成年後見制度を利用し、代理人を立てて遺産分割協議を行います。
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行方不明の方がいる場合:裁判所に「不在者財産管理人」を選任してもらうなどの法的なステップを踏むことで、手続きを進めることが可能です。





