「私の父が亡くなる前に、兄が先に他界してしまった。この場合、兄の子供(孫)はどうなるの?」
「代襲相続(だいしゅうそうぞく)という言葉を聞いたけれど、一体どんな仕組みなの?」
「疎遠にしている孫にも、相続権はあるのだろうか……」
大切なご家族を亡くされた際、相続の手続きを進める中で突然耳にする「代襲相続」という言葉。
この記事では、代襲相続の仕組みから「孫が相続人になる具体的なケース」、そして注意点を解説します。
そもそも「代襲相続」とは何でしょうか?
代襲相続とは、一言で言うと「本来相続人になるはずだった人が先に亡くなっている場合、その子供が代わりに相続権を引き継ぐ制度」のことです。
「代わり(代)」に「襲う(引き継ぐ)」と書く通り、本来の相続人が持っていた「バトン」を、次の世代に渡すイメージです。
登場人物で整理してみましょう
例えば、次のような家族構成を想像してみてください。
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おじいちゃん(被相続人)
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お父さん(おじいちゃんの子供:本来の相続人)
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あなた(おじいちゃんの孫:代襲相続人)
もし、おじいちゃんより先に、お父さんが亡くなってしまったとします。その後に、おじいちゃんが亡くなった場合、お父さんはもうこの世にいませんので、本来お父さんがもらうはずだった取り分を、その子供である「あなた」が引き継ぐことになります。これが代襲相続の基本の形です。
どんな時に「代襲相続」は発生するの?3つの条件
代襲相続は、単に「先に亡くなっている」ときだけではありません。
法律では、以下の3つのケースで発生すると定められています。
① 死亡(もっとも一般的なケース)
本来の相続人が、被相続人よりも先に亡くなっている場合です。
② 相続欠格(そうぞくけっかく)
あまり聞き慣れない言葉ですが、相続人が「遺言書を偽造した」「被相続人を殺害した(または殺害しようとした)」など、著しく不当な行為をした場合に、法律によって強制的に相続権を剥奪されることです。この場合も、その子供に代襲相続が発生します。
③ 相続廃除(そうぞくはいじょ)
被相続人(亡くなった方)が生前に「この人にだけは相続させたくない」と家庭裁判所に申し立てて、相続権を失わせることです。
虐待や重大な侮辱などがあった場合が該当します。この場合も、その子供に代襲相続が発生します。
※注意点:相続放棄(そうぞくほうき)には代襲相続は発生しません。
ここが一番の間違いやすいポイントです。お父さんが生前に「私は相続を放棄します」と家庭裁判所で手続きをした場合、その子供(孫)が代わりに相続することはできません。
放棄をすると、最初から相続人でなかったことになるため、バトン自体が消えてしまうからです。
代襲相続ができる人、できない人の境界線
「代わりに相続できる」範囲は、どこまでも続くわけではありません。法律で厳密に決まっています。
代襲相続ができる人(代襲者)
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孫・ひ孫(直系卑属): おじいちゃんの子供が先に亡ければ、孫が。孫も亡くなっていれば、ひ孫が。これはどこまでも下の世代へ続きます(再代襲といいます)。
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甥・姪(兄弟姉妹の子): 亡くなった方に子供や親がおらず、兄弟姉妹が相続人になるケースです。兄弟が先に亡くなっていれば、その子供(甥・姪)が代襲します。
代襲相続が「できない」人
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配偶者(夫や妻): 先に亡くなったお父さんの「妻」は、代襲相続人にはなれません。あくまで血のつながりがある子供(孫)に限られます。
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甥・姪の子供: 兄弟姉妹の相続の場合、代襲ができるのは「甥・姪まで」です。甥・姪も亡くなっているからといって、その子供が再代襲することはありません。
孫が相続人になると、何が変わるの?(権利と取り分)
孫が代襲相続人になった場合、その権利や取り分はどうなるのでしょうか。
もらえる割合(法定相続分)はそのまま引き継ぐ
代襲相続人は、本来の相続人がもらうはずだった割合をそのまま引き継ぎます。 例えば、おじいちゃんが亡くなり、相続人が「長女」と「亡くなった長男の子供2人(孫)」だった場合。
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長女:全体の1/2
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孫2人:本来長男がもらうはずだった1/2を、2人で分ける(つまり各1/4ずつ)
遺留分(いりゅうぶん)も引き継げる
「遺留分」とは、法律で守られた最低限の取り分です。
もしおじいちゃんが「全財産を愛人に遺す」という遺言を書いていたとしても、代襲相続人である孫は、「私たちの分の遺留分を返してください」と主張することができます。
よくあるトラブル:代襲相続の「落とし穴」
知識として知っておくだけでなく、実際の現場で起きやすいトラブルを知っておきましょう。
トラブル①:戸籍の収集が「通常の倍以上」大変!
相続の手続きには、亡くなった方の戸籍を揃える必要がありますが、代襲相続の場合はさらに「先に亡くなった本来の相続人の戸籍」もすべて揃えなければなりません。
これらが全国各地の役所に散らばっていると、一般の方が自力で集めるのは至難の業です。
トラブル②:数十年ぶりの「孫」との再会
疎遠になっていた場合、おじいちゃんの葬儀にも来なかった孫が突然相続人として現れます。
遺産分割協議には「相続人全員のハンコ」が必要ですので、会ったこともない孫に手紙を出し、話し合いに参加してもらわなければなりません。
これがきっかけで、これまでの家族関係にひびが入ってしまうこともあります。
トラブル③:未成年の孫がいる場合
もし代襲相続人である孫が未成年であれば、お母さん(親権者)が代わりに協議に参加します。
しかし、お母さんも同じ相続人である場合(珍しいケースですが)や、利益が相反する場合には、「特別代理人」を裁判所に選んでもらう必要があり、手続きが非常に複雑になります。
甥・姪が代襲相続人になるケースの注意点
兄弟姉妹が相続人になるケースでの代襲相続は、特に慎重な対応が必要です。
「再代襲」がないことに注意
先ほども触れましたが、兄弟の相続の場合、代襲は「一代限り」です。
おじいちゃん(被相続人)から見て、兄弟が亡くなっていて、さらにその子供(甥・姪)も亡くなっている場合、その下の子供(甥・姪の子)には相続権はいきません。ここを勘違いして、本来相続人ではない人に声をかけてしまうトラブルがあります。
遺留分がないことに注意
兄弟姉妹(およびその代襲者である甥・姪)には、遺留分がありません。
つまり、おじいちゃんが「すべての財産をユニセフに寄付する」という遺言を書いていた場合、甥・姪は1円ももらうことができず、文句を言うこともできません。
代襲相続で困らないための「生前対策」のススメ
代襲相続が発生することがあらかじめ分かっているなら、生前に準備をしておくことで、後のトラブルを減らすことができます。
① 遺言書を書いておく(最優先)
「誰に、何を、どのくらい渡すか」を遺言書で決めておけば、相続人全員のハンコが必要な「遺産分割協議」をスキップできます。
特に、孫が遠方にいたり疎遠だったりする場合は、遺言書があるだけで残された家族の負担は劇的に軽くなります。
② 養子縁組を検討する
もし孫を実の子と同じように扱い、確実により多くの財産を遺したい場合は、孫と「養子縁組」をする方法もあります。ただし、これには相続税の計算上のルールや他の子供たちとのバランスなど、慎重な検討が必要です。
③ 生命保険を活用する
特定の孫に現金を遺したい場合、生命保険の受取人をその孫に指定しておく方法があります。
生命保険金は、原則として遺産分割の対象外(受取人固有の財産)となるため、他の相続人の同意なしに、亡くなった後すぐにお金を受け取らせることができます。
代襲相続の手続きをスムーズに進める「3ステップ」
もし今、あなたが代襲相続の当事者になったら、以下の順番で動いてみてください。
ステップ1:家系図を正しく把握する
まずは、誰が存命で、誰が先に亡くなっているのかを紙に書き出します。
特に、被相続人(おじいちゃん)の死亡日と、本来の相続人(お父さん)の死亡日の前後関係をはっきりさせることが重要です。
ステップ2:戸籍収集を専門家に依頼する
代襲相続の戸籍収集は、時間がかかる作業です。不慣れな方が行うと、役所から「これでは足りません」と言われ、何度も足を運ぶことになります。
ステップ3:早めに他の相続人とコミュニケーションを取る
「孫が代襲相続することになった」という事実を、関係者全員で早めに共有します。
事実を隠したり、勝手に進めようとしたりすることが、一番の揉め事の種になります。





