相続後に「実は隠し子がいる」と分かったら?戸籍の見方から遺産分割のやり直しまで解説

せっかく相続の手続きを進めようとしていた矢先、亡くなった父(あるいは母)に「隠し子」がいたことが判明したら……。

「これからどうすればいいの?」「今まで話し合ってきた内容は無効?」と、頭の中が真っ白になってしまうかもしれません。

こうした事態は、実は現代の日本でも決して珍しいことではありません。

この記事では、そんな「予想外の相続人」が現れたときに、どのような手順で解決していけばよいのか、法律の知識を噛み砕いて解説します。

なぜ相続手続きの途中で「隠し子」が発覚するのか?

多くの場合、隠し子の存在は「相続登記(不動産の名義変更)」や「預貯金の払い戻し」の準備段階で発覚します。

 戸籍謄本を「出生まで」遡るため

相続手続きでは、亡くなった方の「出生から死亡まで」のすべての戸籍謄本を集める必要があります。

これは、他に相続人がいないことを証明するために不可欠な作業です。

この調査の過程で、古い戸籍に「認知」という二文字が見つかることがあります。

  • 認知とは: 婚姻関係にない男女の間に生まれた子を、自分の子として法律的に認めること。

現在の家族が知らない「過去」が記されている

現在の戸籍には、今一緒に住んでいる家族のことしか書かれていないことが多いですが、過去の古い戸籍(除籍謄本や改正原戸籍)には、昔の婚姻歴や、その時に生まれたお子さんの名前が残っています。

法律上、隠し子(非嫡出子)にも相続権はあるの?

隠し子(非嫡出子)であっても、法律上の相続権は、結婚している配偶者との間に生まれた子(嫡出子)と全く同じです。

法律の改正により、相続分は「平等」になりました

以前の法律では、隠し子の相続分は、結婚している子(嫡出子)の半分とされていました。

しかし、最高裁判所の判断により平成25年(2013年)に法律が改正され、現在は「どんな子であっても、親の財産を分ける権利は平等」となっています。

  • 配偶者と子供2人(うち1人が隠し子)の場合:

    • 配偶者:1/2

    • 結婚している子:1/4

    • 隠し子:1/4

このように、同じ「子」として扱われます。感情的には納得がいかない部分もあるかと思いますが、法律上は対等な立場として接していく必要があります。

もし隠し子を無視して相続手続きを進めたらどうなる?

「隠し子には教えずに、今の家族だけで財産を分けてしまおう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それは非常にリスクの高い行為です。

1. 遺産分割協議が無効になる

相続人全員が揃っていない状態で行われた話し合い(遺産分割協議)は、法律上「無効」となります。

隠し子を除いて作った書類(遺産分割協議書)では、法務局での不動産の名義変更も、銀行での解約手続きも受け付けてもらえません。

2. 後から「遺産を返してほしい」と言われるリスク(相続回復請求)

たとえ手続きが一度通ってしまったとしても、後から隠し子の存在に気づいた本人が「自分も相続人だ」と名乗り出た場合、すでに分けた財産を返し、最初から話し合いをやり直さなければなりません。これを「相続回復請求」と呼びます。

3. トラブルが長期化し、精神的な負担が増える

隠し子の存在を知りながら意図的に排除したとなると、相手との関係はさらに悪化します。

誠実に対応することが、結果として一番早く、静かに解決する近道となります。

隠し子がいた場合の具体的な対処ステップ

では、戸籍を調べていて「認知」の事実を見つけた場合、具体的にどう動けばよいのでしょうか。一歩ずつ、冷静に進めていきましょう。

ステップ1:戸籍の正確な読み取り

まずは、そのお子さんが「現在も存命か」「どこに本籍があるか」を特定します。

戸籍の読み取りは非常に複雑で、古い手書きの文字などは専門家でも慎重に確認する作業です。

ステップ2:付票を取得して住所を特定する

戸籍の「本籍地」を頼りに、「戸籍の付票(ふひょう)」という書類を取得します。これにより、相手の現在の住所がわかります。

ステップ3:書面で通知を送る(お手紙)

いきなり電話をしたり、自宅を訪問したりするのはおすすめしません。お互いに心の準備ができていないため、感情的な衝突が起きやすいからです。

まずは、誠実な内容のお手紙を送り、「相続が発生したこと」「話し合いをしたいこと」を伝えます。

ステップ4:遺産分割協議(話し合い)

相手の返答を待ち、財産の目録を提示した上で、どのように分けるかを相談します。

相手が「権利を主張したい」という場合もあれば、「関わりたくないので相続放棄したい」という場合もあります。

もし相手が「非協力的な場合」や「行方不明」だったら?

お手紙を送っても返事がない、あるいは最初からどこにいるか全く分からないといったケースも想定されます。

1. 相手が話し合いに応じてくれないとき

「家庭裁判所」での調停を利用します。第三者である調停委員を交えて話し合うことで、感情的な対立を和らげながら、公平な解決を目指すことができます。

2. 相手が行方不明のとき

「不在者財産管理人」という役職の人を家庭裁判所に選んでもらう必要があります。行方不明だからといって、その人を抜きにして勝手に財産を分けることはできません。

遺言書がある場合と、ない場合の違い

もし亡くなった方が「遺言書」を残していた場合、状況は少し変わります。

遺言書がある場合

遺言書に「特定の財産を妻に、家を長男に継がせる」といった内容が書かれていれば、基本的にはその通りに進めることができます。

隠し子の存在を知った上での遺言であれば、手続きはスムーズです。

「遺留分(いりゅうぶん)」に注意

ただし、隠し子には「遺留分」という、最低限保証された相続分があります。

遺言書で隠し子に一円も渡さないと決めていても、隠し子が「自分の分をください」と請求(遺留分侵害額請求)してきた場合、その分を現金で支払わなければならない可能性があります。

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