知らない人から「遺産をあげる」と言われたら?遺贈を放棄するための知識

「知らない人からの遺贈」に戸惑っているあなたへ

ある日突然、見知らぬ人や、あるいは名前すら聞いたことがない遠い親戚の遺言書に、あなたの名前が書かれていたとしたら……。

ドラマのような話ですが、決して珍しいことではありません。

「なぜ私に?」「何か裏があるのでは?」「多額の借金を押し付けられたらどうしよう」という方もいらっしゃるでしょう。

まず最初にお伝えしたいのは、「いらないものは、断ることができる」ということです。

法律の世界ではこれを「遺贈(いぞう)の放棄」と呼びます。

この記事では、見知らぬ人からの遺贈という予期せぬ事態に直面したあなたが、どのように対処すべきか、

そしてどのようにしてその権利を放棄するかを解説します。

そもそも「遺贈」とは何?相続とは何が違うの?

「遺贈」という言葉、日常生活ではあまり聞き慣れませんよね。

遺贈は「遺言書によるプレゼント」

遺贈とは、亡くなった人(遺言者)が遺言書によって、自分の財産を特定の人に譲ることを指します。

相続人以外でも受け取ることができる

「相続」は、亡くなった人の配偶者や子供など、法律で決められた範囲の親族(法定相続人)が財産を引き継ぐことです。

一方で「遺贈」は、親族でない第三者であっても財産を受け取ることができます。

あなたが「知らない人」だと思っていても、相手はあなたに対して何らかの恩義を感じていたり、あるいは孤独な晩年にあなたの存在が心の支えになっていたりして、遺贈の対象に選ぶことがあるのです。

知らない人からの遺贈を「放棄」することはできるの?

遺贈を拒否することは可能です。

相手が善意で遺言を書いたのだとしても、それを受け取るかどうかはあなたの自由です。

無理に受け取って、その後の複雑な手続きや人間関係に巻き込まれる必要はありません。

遺贈の放棄に「理由」はいらない

「面識がないから」「なんとなく怖いから」「今の生活を乱されたくないから」といった理由で十分です。

家庭裁判所や他の相続人に対して、納得させるための特別な理由を説明する義務はありません。

いつでも放棄できるの?

遺贈を放棄できる期間は、遺贈の種類(特定遺贈か包括遺贈か)によって異なりますが、

基本的には「自分が遺贈を受けることを知った後」であれば、いつでも、あるいは一定期間内に行うことが可能です。

 要注意。遺贈には「2つの種類」があります

遺贈を放棄する手続きを考える上で、最も重要なのが「どのタイプの遺贈なのか」という点です。

これを間違えると、手続きの期限を過ぎてしまうリスクがあります。

① 特定遺贈(とくていいぞう)

「〇〇市の土地を譲る」「現金100万円を譲る」というように、具体的にどの財産をあげるかが決まっているタイプです。

  • 放棄の期限: 特にありません。いつでも放棄できます。

  • 方法: 遺言執行者(遺言の内容を実現する人)や相続人に対して、「いりません」と伝えるだけで成立します。

② 包括遺贈(ほうかついぞう)

「財産の3分の1を譲る」「全ての財産を譲る」というように、財産の割合だけが決まっているタイプです。

  • 放棄の期限: 「遺贈があったことを知った時」から3ヶ月以内です。

  • 方法: 家庭裁判所で正式な手続きをする必要があります。

※ 知らない人からの遺贈の場合、相手が借金を抱えている可能性も否定できません。

包括遺贈の場合、プラスの財産だけでなく「マイナスの財産(借金)」も割合に応じて引き継いでしまうため、早急な対応が必要です。

なぜ「知らない人」から遺贈されることがあるのか?

ケースA:親戚づきあいが途絶えていた遠縁の親族

何十年も連絡を取っていない叔父や叔母、あるいはいとこが、孤独死のあとに遺言を残していたケースです。

ケースB:氏名や住所の書き間違い

非常に稀ですが、同姓同名の別人と間違えて遺言書に書かれてしまうケースもゼロではありません。

ケースC:過去の恩返し

あなたが忘れているような小さな親切(例えば、道案内をした、昔少しだけ仕事で助けたなど)を、相手が一生の恩として覚えていたケースです。

遺贈を放棄しないとどうなる?(放置のリスク)

固定資産税や管理責任が発生する

もし遺贈されたのが「不動産」だった場合、あなたが受け取る意思を示さなくても、手続きが滞っている間、その土地の管理責任を問われたり、最終的に所有権があなたにあるとみなされて税金の通知が来たりすることがあります。

他の相続人とのトラブル

亡くなった方に他に親族(相続人)がいる場合、あなたが「受け取るのか、受け取らないのか」をはっきりさせないことで、全体の遺産分割協議が進まなくなることがあります。そうなると、他の相続人から催促を受けたり、トラブルに発展したりする可能性があります。

具体的な「放棄の手続き」ステップガイド

では、具体的にどのようにして放棄を進めればよいのでしょうか。ステップごとに解説します。

ステップ1:遺言の内容を確認する

まずは、手元に届いた通知や遺言書の写しを確認しましょう。

  • 誰が亡くなったのか

  • 何が自分に贈られようとしているのか(特定遺贈か、包括遺贈か)

  • 遺言執行者は選任されているか

ステップ2:遺言執行者や相続人に連絡する(特定遺贈の場合)

特定遺贈であれば、相手に「放棄する」という意思を伝えるだけで済みますが、後々のトラブルを防ぐために「内容証明郵便」を送るのが一般的です。

ステップ3:家庭裁判所へ申し立てる(包括遺贈の場合)

包括遺贈の場合は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「遺贈放棄の申述書」を提出します。この期限は3ヶ月以内という非常に短いものですので、注意が必要です。

「知らない人」からの連絡、詐欺の可能性はない?

最近では「遺産が当たった」「あなたが相続人に選ばれた」という巧妙な詐欺も増えています。

本物かどうかを見極めるポイント

  1. 裁判所からの封筒か: 家庭裁判所からの通知であれば、事件番号などが記載されています。

  2. 弁護士・司法書士からの通知か: 差出人の事務所名を確認し、実在するかをインターネットで調べましょう。

  3. 金銭を要求されていないか: 「手続き費用として先に10万円振り込んでください」といった要求があれば、ほぼ間違いなく詐欺です。

本物の遺言による通知の場合、まずは「事実の確認」を求められます。いきなりお金を振り込めと言われることはありません。

 遺贈放棄のメリットとデメリット

メリット

  • 精神的な解放: 見知らぬ人との関わりを完全に断つことができます。

  • リスク回避: 隠れた借金や、不動産の管理責任から逃れられます。

  • 迅速な解決: 手続きを済ませれば、それ以降連絡が来ることはありません。

デメリット

  • 財産を受け取れない: 当たり前ですが、実は価値のある財産だったとしても、二度と手に入りません。

  • 多少の手続き費用: 専門家に依頼したり、書類を取り寄せたりする実費は発生します。

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