「相続の手続きをしなければならないけれど、どうしても会いたくない親族がいる」
「昔から折り合いが悪く、連絡先すら知らない相手とどう話し合えばいいの?」
大切な方を亡くされた悲しみの中で、こうした人間関係の悩みを抱えるのは本当にお辛いことだと思います。
実は、司法書士として多くのご相談をお受けする中で、もっとも多いお悩みの一つが、この「相続人同士の心理的距離」についてです。
相続人全員が1カ所に集まらなくても、手続きを完了させることは十分に可能です。
なぜ「会いたくない」と思っても大丈夫なのか?
相続の手続きといえば、「親族一同が集まって話し合う」というイメージがあるかもしれません。しかし、現代においてそれは必須ではありません。
相続の手続きは「合意」があれば「対面」は不要
法律上、遺産分割協議(誰がどの財産をもらうか決めること)で求められるのは、相続人全員の「合意」です。
この合意は、必ずしも一堂に会して行う必要はなく、書面や郵送のやり取りで進めることができます。
精神的な負担を減らすことが「良い相続」への第一歩
「会いたくない」という感情を無理に押し殺して無理に対面すると、感情がこじれ、まとまるはずの話も決裂してしまうことがあります。
お互いのために、あえて「距離を置く」という選択をすることは、決して不誠実なことではなく、むしろ円満解決のための賢明な判断といえます。
顔を合わせずに遺産分割を進める「持ち回り方式」とは?
直接会わずに手続きを進めるためのもっとも一般的な方法が、「持ち回り方式(もちまわりほうしき)」による遺産分割協議書の作成です。
持ち回り方式の流れ
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代表者が原案を作成する: まずは誰がどの財産を相続するか、たたき台となる書類(遺産分割協議書)を作ります。
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郵送で署名・捺印を依頼する: 作成した書類を、一人目の相続人に郵送します。
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リレー形式、または個別形式で回収する: * リレー形式: Aさん→Bさん→Cさんと順番に回していく方法
個別形式(同じ内容の書類を複数枚作り、代表者が各相続人へ個別に送り、それぞれから返送してもらう方法)が推奨される理由
「会いたくない」相手がいる場合、リレー形式だと「今どこで書類が止まっているか」が見えにくく、ストレスが溜まります。
また、書類が汚れたり紛失したりするリスクも高まります。
一方、個別形式であれば、あなたは事務的に郵送のやり取りをするだけで済み、相手がいつ判を押したかを個別に把握できるため、精神的な余裕が生まれます。
「連絡先も知らない」場合でも手続きは進められる?
「会いたくない」どころか、「どこに住んでいるかさえ分からない」というケースも珍しくありません。
しかし、戸籍制度がある日本では、法的な手段を使って相手を探し出すことができます。
戸籍の附票(ふひょう)で現住所を特定する
司法書士などの専門家は、受任した業務を遂行するために必要な範囲で、相続人の戸籍謄本や「戸籍の附票」を取得することができます。
戸籍の附票には、その戸籍に入っている人の住所の変遷が記録されているため、現在の住民票上の住所を特定することが可能です。
手紙を送ることから始める
住所が判明したら、いきなり難しい書類を送るのではなく、まずは丁寧な「お手紙(ご挨拶状)」を送るのがマナーです。
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亡くなったことの報告
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相続の手続きが必要であることの通知
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今後、書類を送付させていただきたい旨の相談
このように、ワンクッション置くことで、相手の警戒心を解き、スムーズなやり取りに繋げることができます。
相手と話したくない場合の「代理人」という選択肢
「手紙を出すことすら苦痛」「相手から何を言われるか怖くて直接やり取りできない」という場合は、あなたの代わりに窓口となる「代理人」を立てることを検討しましょう。
相手が「協力してくれない」時の最終手段
万が一、手紙を送っても無視されたり、理由なく署名を拒否されたりした場合はどうすればよいでしょうか。
遺産分割調停(ちょうてい)の活用
どうしても話し合いが進まない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることになります。
「裁判」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、調停は「調停委員」という第三者を介した話し合いの場です。
ここでも、基本的には相手と別室で待ち、直接顔を合わせないよう配慮してもらうことが可能です。
行方不明の場合は「不在者財産管理人」
相手の住所を調べても、そこに住んでいない、あるいはどこにいるか全く見当がつかない場合は、「不在者財産管理人」を選任する手続きが必要になります。これには時間がかかりますので、早めに専門家へ相談することをお勧めします。





