遺言書の「検認」って何?何のためにやるの?手続きの流れと注意点を解説

「亡くなった父の引き出しから遺言書が出てきたけれど、勝手に開けてもいいの?」

「法務局や裁判所から『検認』が必要だと言われたけれど、一体何をされるの?」

「検認をしないと、相続手続きが進まないって本当?」

大切な家族が遺してくれた遺言書。それを見つけたとき、安堵の気持ちとともに「これからどうすればいいのだろう」という不安が押し寄せてくるのは、とても自然なことです。

「検認」は、家庭裁判所で行う法律上の手続きですが、その内容を知らないまま放置したり、良かれと思って開封してしまったりすると、後から思わぬトラブルに発展することもあります。

この記事では、遺言書の「検認」について、なぜ必要なのか、どのような流れで進むのか、そして司法書士の視点から「これだけは知っておいてほしい」という注意点を解説します。

 そもそも遺言書の「検認」とは?その正体を分かりやすく説明します

「検認」という言葉は、日常生活ではまず耳にしませんよね。簡単に言うと、検認とは「家庭裁判所による遺言書の現状確認」のことです。

もっとイメージしやすくお伝えするなら、遺言書の内容を確定させ、後から誰かが書き換えたり、隠したりできないように

「この日の時点で、確かにこの内容で遺言書が存在していましたよ」という証拠を残す手続きです。

検認が必要な遺言書・不要な遺言書

実は、すべての遺言書に検認が必要なわけではありません。ここが最初の間違いやすいポイントです。

  • 検認が必要なもの(自筆証書遺言):亡くなった方が自分一人で書き、自宅の金庫や仏壇、机の引き出しなどに保管していた遺言書。

  • 検認がいらないもの(公正証書遺言):公証役場で公証人が作成し、原本が公証役場に保管されている遺言書。

  • 検認がいらないもの(法務局の保管制度を利用した場合):自分で書いた遺言書であっても、法務局(遺言書保管所)に預けていた場合。

 なぜ「検認」をしなければならないの?3つの大きな理由

「内容さえ分かれば、わざわざ裁判所に行かなくてもいいのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、検認には非常に重要な3つの役割があります。

① 偽造・変造(書き換え)を防ぐため

遺言書が見つかった後、特定の相続人が自分に有利になるように内容を書き換えてしまう……というトラブルは、残念ながらゼロではありません。裁判所が「この内容でした」と記録することで、そのような不正を防ぎ、故人の本当の意思を守ることができます。

② 相続手続きの「鍵」になるため

銀行で預金を解約したり、法務局で不動産の名義変更(相続登記)をしたりする際、自筆の遺言書を使う場合は、必ず「検認済証明書」が付いた遺言書を提示しなければなりません。

検認を受けていない遺言書を持って行っても、窓口では「手続きはできません」と断られてしまいます。

③ 遺言書としての体裁をチェックするため

家庭裁判所の裁判官が、日付があるか、署名・捺印があるか、加筆修正の仕方が正しいかなど、形式的なチェックを行います。

ただし、注意が必要なのは「内容が法的に有効かどうか(遺言者の意思が正常だったか等)」までは判断してくれないという点です。

【重要】遺言書を見つけても、絶対に「勝手に開けないで」ください

ここで、一番大切なルールをお伝えします。 封印がされている遺言書を見つけたとき、絶対にその場で開封してはいけません。

「中身が気になる」「早く確認してあげたい」というお気持ちは痛いほど分かりますが、法律(民法)では、封印のある遺言書は「家庭裁判所で相続人の立ち会いのもとで開封しなければならない」と定められています。

勝手に開けてしまったらどうなるの?

もし誤って開けてしまった場合でも、遺言書自体が無効になるわけではありませんので、その点は安心してください。

しかし、以下のようなデメリットが生じます。

  • 過料(罰金のようなもの)を科される可能性がある:5万円以下の過料に処せられることが法律で決まっています。

  • 他の親族から疑われてしまう:一番悲しいのがこれです。「勝手に開けて、自分に都合のいいように書き換えたのではないか?」と他の相続人から不信感を抱かれ、その後の遺産分割協議がこじれる原因になります。

もし封筒が開いていたとしても、そのままの状態で早急に検認の手続きを行いましょう。

検認手続きの具体的な流れ

では、実際に検認を受けるにはどうすればいいのでしょうか。具体的な5つのステップを解説します。

ステップ①:管轄の家庭裁判所を調べる

検認はどこでもできるわけではありません。「亡くなった方の最後の住所地」を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

遠方であっても、基本的にはそこへ行く必要があります。

ステップ②:必要書類を揃える

ここが一番大変な作業です。主な必要書類は以下の通りです。

  • 家事申立書(裁判所に雛形があります)

  • 亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本

  • 相続人全員の戸籍謄本

  • (場合によって)代襲相続人や受遺者の戸籍謄本

これらを揃えるだけで、不慣れな方だと数週間から1ヶ月ほどかかってしまうことも珍しくありません。

ステップ③:申立て(書類の提出)

書類が揃ったら裁判所に提出します。この際、収入印紙と連絡用の郵便切手が必要になります。

ステップ④:裁判所から「検認期日」の通知が届く

申立てからおよそ1ヶ月後くらいに、裁判所から「この日に検認を行いますので来てください」という通知(呼出状)が相続人全員に届きます。

申立人は必ず出席が必要ですが、他の相続人は出席するかどうかは自由です。

ステップ⑤:検認当日(開封と確認)

当日は遺言書の原本を持って裁判所へ行きます。 裁判官の前で遺言書が開封され、形状、日付、署名、印影、訂正箇所などが確認されます。

確認が終わると、遺言書の末尾に「検認済証明書」を綴じ込んでもらえます。これでようやく、銀行や法務局での手続きができるようになります。

 検認が終わった後に「すべきこと」と「できないこと」

検認が終わってホッとするのも束の間、実はここからが本当の相続手続きのスタートです。

検認が終われば、すぐに財産をもらえる?

いいえ、検認はあくまで「遺言書の現状を確認した」だけです。

  • 遺言の内容が明確な場合:検認済証明書付きの遺言書を使って、不動産の名義変更や預金の解約に進めます。

  • 遺言の内容が曖昧な場合:例えば「財産はすべて長男に任せる」といった書き方だと、銀行が応じてくれないことがあります。その場合は、改めて相続人全員で話し合い(遺産分割協議)が必要になることもあります。

遺言の内容に納得がいかない場合は?

検認を受けたからといって、その遺言書の内容を絶対に受け入れなければならないわけではありません。

「遺言書が偽造されている」「書いたときに父は認知症で判断能力がなかった」といった争いがある場合は、別途「遺言無効確認の訴え」という裁判を起こす必要があります。

検認はこれらの争いを解決する場ではない、という点に注意してください。

失敗しないためのアドバイス:検認でよくあるトラブル

多くの事例を見てきた中で、よくある「つまずきポイント」を共有します。

① 住所変更や氏名変更が反映されていない

遺言書に書かれた住所が古いままだったり、相続人が結婚して姓が変わっていたりすると、同一人物であることを証明するために、さらに追加の書類(住民票の除票や戸籍の附票など)が必要になります。

② 遺言書が見つかったあとに放置してしまう

「忙しいから」「まだ心の整理がつかないから」と検認を先延ばしにしている間に、他の相続人が亡くなってしまったり(数次相続)、遺言書を紛失してしまったりするリスクがあります。見つけたら、なるべく早めに専門家へ相談することをお勧めします。

③ 自分で戸籍を集めきれない

前述の通り、亡くなった方の「出生から死亡まで」の戸籍を集めるのは、想像以上に過酷な作業です。

挫折してしまい、手続きが止まってしまう方が非常に多いです。

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